アニメには珍しく、痛さの表現が抜群に上手い。
これはもう有名なアニメ映画ですが、1984年公開と、40年以上前の作品です。これ特に印象に残るのはスカッと晴れ上がった青空と、青空を飛翔するナウシカが乗った真っ白いメーヴェ。そういうシーンが多いわけではないのだが、なぜかそういうイメージが強烈に伝わってくる。
宮崎駿監督の劇場版アニメの第二弾。第一弾は「ルパン三世 カリオストロの城」で、ヒロインは、クラリスという、お城に閉じ込められた可憐なお姫様だった。
しかし、第二弾の「風の谷のナウシカ」では、主人公は同じお姫様であるにもかかわらず、クラリスと全然違う。一種、万能選手なんですよね。それでもって、それをひけらかすでもなく、親しみやすい性格で、風の谷の人々にも人気がある。やはり万能選手なんですね。
この作品では、ナウシカの可憐で力強い性格に魅了されますが、これは「未来少年コナン」のラナ(ESP)と、「ルパン三世 カリオストロの城」のクラリス(王女+可憐)と不二子(知恵+強い女)のヒロイン3人の女性キャラが合成されてできた、贅沢なキャラです。従って、クラリスと同じ声優さんが演じているのも納得で、時々迫力があり、上手いです。
ナウシカは、王女であり、可憐であり、知恵があり、強く、ESPがあり、人々に人気があり、さらに、蟲とも交感できるのですよ? だから、主人公ナウシカは、本当の万能選手=超人であって、ここまで、主人公が贅沢な設定の宮崎アニメって他にあるのか?と思います。それに、実際、こんな女性なんて、実在したりするのだろうか、いないだろう?というほどに、ナウシカは万能で、一種、独特な存在感がある。
おそらく、ナウシカのこれは盛りすぎの設定であって、だから、このあと、こういう一種の超人のような人物は、宮崎アニメには(ほとんど)登場しない。まあ、宮崎アニメの主人公は、ほとんど皆が特殊仕様になっているのだが、ナウシカが一番、贅沢仕様かな。
さらに言えば、高畑勲監督のアニメにでてくる女性は、自分は男性だが、彼女たちには生理がありそうな気がする(まさに、「おもひでぽろぽろ」に生理のエピソードがあった。あれが、学校で、性教育を始めるというか、性教育を変えるきっかけになったような気がする。)のだが、宮崎アニメに登場する女性には生理があるようには見えない。やはり、特殊仕様だからかな?(あれ、何の映画だっけ。生理の娘がベッドに寝ていると、母親が娘を叱るの。「生理ぐらいで学校を休んで! 今、私は生理です、みたいな顔してちゃいけないのよ!」。そうか、生理だってわかっちゃいけないのか。)
やはり、宮崎アニメの主人公の女性たちは、どこか超人的で、宮崎駿が好きなお姫様(的)であって、一種、人間離れしている。それがほとんどどの作品にも共通していると思う。
この作品は、40年以上も前の作品ですが、作画も非常に上手く、風に乗るメーヴェの動きが非常に滑らかです。
それから特に巨大なものの表現が上手く、王蟲、バカガラス、巨神兵など、当時の技術でよく描画しきったと思います。あと、ハーモニー処理が抜群に上手い。これは美術監督の中村光毅の事務所の女性が頑張ったという話を聞いています。
あと、一番特徴的なのは、ナウシカが、キツネリスに指を噛まれたり、怪我した足を酸の海に突っ込んだりという、痛さの表現も抜群に上手いです。この作品の最大のポイントは、痛さが、見ている人に伝わる、という点ですかね。こういう作品は珍しい。特にアニメでは珍しいのではないのか。宮崎アニメの中でも、女性の主人公がここまで痛い思いをするって、他にないよな。
「さらば宇宙戦艦ヤマト」で腹部を撃ち抜かれて瀕死の森雪も、ここまで痛そうにはしていない。ナウシカの方が、圧倒的に痛そうだ。この痛さの表現は斬新だと思うんだよね。宮崎駿監督の「もののけ姫」で、後半、シシガミの首を切ったところから、沢山の人間達、生き物たちが死ぬが、あまり痛そうにしていない。だから、物足りないのだよなあ。
ナウシカは腐海の毒の胞子を吸い込んでもこらえるし、キツネリスに指を噛まれてもこらえるし、基本的に、抑える人なんだけれども、怪我した足を酸の海に突っ込んだ時は絶叫する。これは効くね。
この「痛さ」があったからこそ、王蟲の子の気持ちが変わり、物語が急転回した。これ、キリストの、十字架刑と同じじゃないのか? だから、最後、ナウシカは一度、死んで、再生するのだ。
最後、再生シーンが、宮崎駿か誰かが「これじゃ宗教画だな」と言っていたらしいが、それもそのはず、ナウシカは、どう見ても、キリストだもの。そう明言していないだけで、実質的には、救世主であり、キリストですよね?
歴史に残る名作です。できれば、続編のコミック版のアニメ化をしてくださったら最高だと思います。


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