「アメリカの中東戦略とはなにか 石油・戦争・同盟」 溝渕正季

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アメリカとイスラエルが「特別な関係」を形成する本当の要因とは、一体何なのだろうか?

溝渕正季先生は、明治学院大学の法学部政治学科准教授だそうです。TVのワイドショーで現在の中東情勢・問題について、にこやかに、そして丁寧に解説、質疑応答されており、1984年生まれとまだお若いのに、やはり大学の先生というものは大したものだと、感心した次第です。そこで、溝渕先生の中東問題を書かれたこの本を、Amazonで購入して読んでみました。

この本は、労作ですが、見出しに合わせた事実や要人の発言をメインに詳細に並べて、わかりやすく丁寧な解説を施し、時々政治家などの回顧録(内容は真贋が混じっていると思う)を引用して、意見A、反対意見の非Aを並列で書き、バランスを保っています。ただ、せっかくの著者の主張がほとんどないか、主張があっても平凡なものです。この本の内容は、まあまあの教科書程度かなと思いました。

ただ、非常に自分が引き付けられる問題点が書かれていました。

「アメリカは国際的な場でイスラエルを一貫して擁護してきた。特に国連においては、イスラエルに対する不当な攻撃とみなした決議に拒否権を行使することで、1970年以降、50回近く、その成立を阻止している。こうしたアメリカの揺るぎない外交的支援により、イスラエルは占領地政策や入植地拡大などに関して国際的な非難や制裁から保護されている。」(同著P.82から抜粋)

「2023年10月以降も、イスラエルがガザにおいて非人道的行為や国際法違反を繰り返してきたにもかかわらず、アメリカは一貫してイスラエルを擁護し続けており、人道的停戦を求める国連安全保障理事会の複数の決議に対しても拒否権を発動した。」(同著P.82から抜粋)

つまり、アメリカとイスラエルが「特別な関係」にあるというのです。この背景としていくつかの要因が整理されているが、自分がその中で、最も説得力がありそうな事項は、これかなと思いました。

「したがって、福音派(プロテスタント)にとってイスラエルを支援することは神の意志に従う行為であり、キリスト教徒が神の永遠の目的に沿うことを保証する行為である。」 (同著P.84から抜粋)

実は、自分は最初、この文章が理解できませんでした。なぜ、キリスト教徒が、ユダヤ教徒の肩をもつような思想を有するのだろうか? 2つの宗教は別物であり、「キリスト教徒、かつ、ユダヤ教徒」という人間は、存在しないのだろう?(例えば、ネット情報によれば、ユダヤ教へ改宗する場合は、転向者はユダヤ教の基本的な信仰原則を受け入れねばならず、他のすべての宗教を捨てなければならない、とされている。) それも、アメリカの福音派(プロテスタント)だけが、ユダヤ教徒の肩をもつような思想を有するのは、明らかにおかしい(本書を読むと、福音派はアメリカだけに存在するように読めます)。

まあ、宗教的な「共通事項」(=聖書の預言者アブラハムの神を受け継ぐと称する・・・)があるから、キリスト教とユダヤ教とで関係性があるというのはわかるのですが、キリスト教徒の国家というのは、世の中にたくさんあるわけで、なぜ、アメリカだけが、イスラエル(ユダヤ人)と(宗教的に)「特別な関係」にあるのだろうか? なぜ、他のキリスト教徒の国家は、イスラエルと「特別な関係」にならないのだろうか? その明確な説明は一切ありません。

他にも、アメリカとイスラエルが「特別な関係」を形成する諸要因は書かれているが、やはり「これ」というものはない。早い話が、説得力に欠けます。

と思い、結局、ここで著者・溝渕正季氏が、宗教的側面として書きたいであろうことだけを、自分なりにネット情報を活用して補足してまとめると、こうなります。

→ 福音派プロテスタント(=「聖書の言葉を絶対的な真理と受け止め、その一字一句をそのまま信じる人々」の総称)は、聖書の物語(世界最終戦争たるハルマゲドンなど)が現実になる器として、ユダヤ人による国家イスラエルを支持する特徴がある。アメリカは、世界で最も福音派の割合が大きい国である。アメリカの福音派は、1億人近く、同国の人口の4分の1を占め、最大の宗教グループである。そのために、アメリカとイスラエルが「特別な関係」にある、と書きたいのだろう。(著者は、なぜこんな簡単なことを、きちんと書けないのだ? わざと曖昧にしている。)

しかし、ネット情報によると、「2016年時点で、世界の福音派は6億1,900万人と推定されており・・・アメリカの福音派は、1億人近く・・・」であり、アメリカ以外には福音派が5億人以上もいる。それなのに、なぜ、他のキリスト教徒の国家は、イスラエルと「特別な関係」にならないのだろうか? 前述したように、その明確な説明は一切ありません。

しかしながら、以下は自分の考えですが、問題は、聖書の預言があったとしても、人間が人為的にイスラエルを建国・運営しているにもかかわらず、ピュー・リサーチ・センターによる2013年のアメリカの世論調査によると、「イスラエルの土地は神がユダヤ人に与えた」と信じる白人の福音派は82%と、ユダヤ人の40%を大幅に上回っていること(同著のP.86)から、当のユダヤ人からみても、白人の福音派はかなり急進的(あるいは妄信的)な信徒ではないのか?

どこまで信頼できるか(数千年の長い歴史の間で、COPY機もなく、転記ミスや、改ざんされている可能性はないのか?)信頼度やや不明の聖書をもとに、イスラエルを建国し、パレスチナなどをどんどん攻撃・侵略して、イランなどにも攻撃して、多数の人間を殺害していく、その過程が神の計画の成就につながるとは、かなり自分勝手で浅はかな考え方だと思うのですが? 普通の神なら、これらの殺害行為に対して怒るのではないのか? 神を舐めた行為であるとしか思えない。

「イスラエルを支援することは、神の計画に積極的に参加し、予言の成就を早めることにつながると信じられているのである。」 (同著のP.85から抜粋)

とあるが、まず、予言とは何か? 例えば、地震予知だったら「いつ、どこで、どのくらいの大きさの」この3点がわからないと、予知にならない、1点でも欠けると、予知として使い物にならないわけですよね。自分は仏教徒ですし、不勉強な身なので、よくわかりませんが、予言もこの3点が明確でないと、予言として機能しませんよね? イスラエルを支援することで人為的に予言の成就を早めること、これは神の計画に積極的に参加することだから善行なのだというよりも、本来、予言が、いつ、どこで、どのように成就するかは神がお決めになることであり、人為的な作為を加えることは神への冒涜行為になりはしないのですか? それに、ハルマゲドンなんか、そう簡単に起きるものでしょうか?(自分には、LUCIFER、PLUTOが関与しているので、余計にそう感じるのかもしれません。)

あと、福音派は、イスラエルを支持することが特徴的であり、つまり、前述したように、(キリスト教+ユダヤ教)/2=福音派 ではありませんか? アメリカがイスラエルを支持するために、作られた(というか利用された)宗派ですよね? 自分の勝手な推測ですが。

つまり、アメリカがイスラエルと「特別な関係」を作り、イスラエルを支持する本当の理由は他にあり、それを隠蔽するためにこの宗派は利用されていますね?

いずれにしても、アメリカとイスラエルの「特別な関係」が形成・維持されている諸要因は本書に書かれてはいるものの、これに納得できるかが大きな問題であり、自分は説得力に欠けており、大いに説明不足だと感じます。

著者の問題というよりも、他の学者も同様だと思いますが、アメリカとイスラエルの「当別な関係」をきちんと説明できない限り、アメリカと中東情勢の関係は、語ったことにならない、自分はそう思います。


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