劇場アニメ「幻魔大戦」

40数年前の作品とは思えないハイクオリティなアニメ映画を堪能できる

このBDを購入するのは2回目です。5年前に購入したBDを破損してしまったので、買い直しました。これが大正解で、最初のBDよりも画質が向上しています。

もともと、撮影監督の趣味だと思いますが、この作品は透過光処理が非常に安定しており(というか、安定しすぎており)きれいなのだが、眩しい感じが控えめな作品であり、そのため、超能力のパワー感とか、エネルギー・ボールなどの灼熱感が弱い部分があったのだが、今回のBDは透過光処理などが派手になっており、これらの弱点がほぼ解消され、楽しく見ることができます。人物の顔もきちんと書いており、背景美術もものすごく上手く、40数年前の作品とは思えないハイクオリティなアニメ映画を堪能できます。

1983年の春休みの公開でしたが、私見では、同時期に上映された「宇宙戦艦ヤマト完結編」、「クラッシャージョウ」とは、雲泥の差があります。やはり、りんたろう監督作品であり、角川アニメ第一弾としての風格を感じます。

なお、アニメ映画「幻魔大戦」は、大友克洋氏のキャラクターデザインのため、東丈は、平井和正氏の原作小説で書かれるような美少年ではありません。ただ、平井和正氏は、東丈は美少年でなくてはならないという信念があり、アニメ映画のキャラクターデザインには猛反対であったため、アニメ映画では「製作」に平井和正氏の名前はありません。

平井和正氏の原作小説の描写は、しかし、女性に対する容姿の記述はかなり細かいのですが、こと東丈の容姿については、17歳の小柄な美少年くらいしか書かれていない(はず)ので、いまいち、イメージがわかない。挿絵があっても、何か違う感じがする。

自分にはアニメ映画の東丈の容姿こそが、美少年ではないが、正しいと思えます。というか、これ以外に思いつかないのです。やはり、大友克洋氏のキャラクターデザインが優秀なのでしょう。

それから、美術は美術監督の椋尾篁が素晴らしい美術を描いているが、後年にスタジオジブリで活躍する男鹿和夫のニューヨークの壊滅シーンの美術もすさまじいです。ただ、椋尾氏の美術画集を買ったことがあるのだが、椋尾氏の最も上手に描けているたくさんの美術画を、アニメ映画本編で使っていない、というものすごくもったいない一面があります。

それから、都市の壊滅シーンを巧みな美術画の上下動撮影で表現するので、その点は物足りなさがあります。特に、都市壊滅(というか惑星崩壊)を描いている、同じりんたろう監督の「銀河鉄道999」「さよなら銀河鉄道999」のものすごい壊滅シーンを見た後では、物足りなさが残ります。でも、まあ、地球を崩壊させるわけにはいかない、だからそこまで描くわけにはいかない、というジレンマも非常によくわかります。そこまで描くと、製作者が幻魔側に立ってしまうから。

あと、物語後半の、爆発している富士山のふもと、力を失った東丈は動物たちと接触します。いままでの話の流れでは、動物との接触がほぼ一切ないので、いきなり子供じみた話になると思われると想像するが、きわめて重要な意味があります。

東丈は小鹿を助けて(脚本には動けなくなった母鹿によりそっている小鹿がおり、その上に木が倒れかかっているので小鹿を助けると書いてあったが、その部分はりんたろう監督の手腕で省略されており、木が突然倒れる。)、「俺はもう駄目だ」と絶望していたら(もっと若いころの姉と丈の川でのイメージ。あの不思議な滝は、冥界への入口だ。「ずるいよお姉ちゃん、待ってよ」という丈は、(幻魔に殺された)姉の後を追って、死のうとしている。自殺しようとしている。)、他の動物たち(草食、肉食、雑食性の動物が入り混じっている)がじっと東丈を見ている。それと眼が合い、はっとする。燃えた木の枝が落ちてきても、動物たちは身じろぎもしない。東丈は動物を見たのではなく、動物の眼を見たのだと思う。この大きな感動は、何なんだろう。

そうだ、(普通の)動物は自殺しない。希死念慮をもつ東丈という一人の人間と、生き残ろうとする動物たちとの対峙。だから「わかったよ、行こう。俺は間違っていた・・・」であり、何がわかったのかといえば、つまりこのことなのだが、この作品ではこれをあえて明確には描かず、こうやって感じさせるだけにとどめているのが非常に見事です。

東丈が自殺を考えていたことは明確にはせずに、この後に来るのは、きれいごとのありきたりな概念(人間も動物たちも地球がはぐくんだ命なんだ)を思考するようになります。すると、東丈の思考がきちんとつながっていないことになります。しかし、平井和正氏の原作は大風呂敷を広げたはいいが結局、物語を収束できずに、未完に終わっている(実は、この理由を作者が原作小説の後書きで書いている)ので、アニメ映画としてひとつの決着をつけるには。必要なプロセスだったのだろうと思います。いずれにしても、すごいアニメです。

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