このブラッシュアップ、総じて成功している
中森明菜さんの初期ワーナー時代の、つまり全盛期の、ベスト盤2枚組です。明菜さんの全盛期のベスト盤はいろいろと発売されていますが、このベスト盤の売りは、単なるデジタルリマスタリングだけではなく、ブラッシュアップと称して、ミキシングを操作しています。それだけではなく、どこにも説明が、多分書いていないと思いますが、「禁区」はシングルとは別テイクのような気がします。
早い話が、このベスト盤は、明菜さんがこだわった音の世界を、リマスタリングと称して、勝手に弄って、音で遊んでいる気がしていて最初は敬遠していましたが、購入してみると、なかなか良いではありませんか。
しかし、最初は聴きにくかったのです。この2枚組ベスト盤は、一方のCDにロック調の歌、一方のCDにバラード調の歌がまとめられており、そうやってまとめたくなる気持ちはわかるのですが、ロック調の歌を1枚聴きとおすと、ヘッドホンでは耳が痛くなってきます。
そこで、自分は、PanasonicのBDレコーダを使って、CDからFLACファイルを取り込み、PCを使って、ロック調、バラード調の歌をバラバラにして、すべてのファイルを発表順に並べ替えて、ネットワークオーディオで鑑賞することにしました。すると、なかなか良いではありませんか。耳も痛くなりませんし、この程度のブラシュアップは許容範囲内だと思います。
多分、シンクラヴィアを使って製作されている「TATTOO」、「I MISSED “THE SHOCK”」は、この独特な耳障りな音の感触を抑えることもしており、さらには、「TATTOO」にミキシングでうまい工夫を行い、「I MISSED “THE SHOCK”」では、後半に工夫が施され、原曲以上に、心象世界を表現することに成功しています。なかなかやりますね。
ただ、「TANGO NOIR」(ミキシングが下品になっている)、「難破船」(エコーが消え、濡れていた音世界が乾いてしまっている)の2曲は少々やりすぎだと思いますが。
数多いシングルで、この2曲以外は、ほぼまともなブラッシュアップになっているというのは、結構良心的ではないかと思います。
それから、このベスト盤にはシングル以外の曲もいくつか含まれていて、アルバム「CRIMSON」の中から「駅」も収録されています。「CRIMSON」も、40年くらい前のアルバムですが、これは明菜さんが、ほとんど全曲、ウイスパーボイス(つまり小声)で歌っているのが特徴です。当時は明菜さんの全盛期でしたので、ほとんどが高音の輝くようなビブラートを駆使した歌唱が目立つシングルが多かったことからすると、「CRIMSON」の歌唱は、一気に力が抜けているのですが、(当時も好きでしたが)40年くらい年月が経過すると、この歌唱もなかなかいいものです。
この「駅」は、竹内まりやさんの作詞、作曲で、明菜さんのために書き下ろされたものですが、この編曲か、あるいは、明菜さんのウイスパーボイス歌唱が、竹内まりやさんの夫の山下達郎さんから批判され、竹内まりやさんがセルフカバーしたものが有名になっています。竹内まりやさんはこの曲を堂々とした解釈で歌っていますが、明菜さんの解釈は違うのです。
そこで、ワーナー陣は考えましたね。このベスト盤に収録されている「駅」は、「CRIMSON」からうまく加工処理されて、明菜さんの二重唱になっており、その分、歌唱がボリューミーになって少し聴きやすくなっています。別テイクの歌唱と重ね合わせたのかどうかまではよくわかりませんが、「ウイスパーボイス歌唱のこういうボリュームアップの方法があったのか!」と感心します。明菜さん本人の意向とは違うと思いますが、なかなか味わい深いものがあります。ちょっと聴きには気付かないと思いますが、特に、(当時、E-ONKYOサイトで購入した)96kHz、24bitのハイレゾ音源だとよく聴き取れます。
そうそう、このベスト盤そのものが、当時、E-ONKYOサイトで、96kHz、24bitのハイレゾ音源で発売されており、自分はそれも購入したのですが、CD以上の表現力を感じます。多分、ワーナー陣は、もともとのアナログ音源をハイレゾ化してブラッシュアップ、リマスタリングを施し、CDに落とし込んでいると思われるので、CD(44.1kHz、16bit)だとどうしても多少は情報の欠落があるのだと思います。もちろん、CDでも楽しめると思いますが、ハイレゾ音源はさらに上を行っています。自分は両方を持っているので、ハイレゾの方がお気に入りです。
画像のリンクは、最初のバージョンのCDです。この後、ラッカーマスターサウンドでリマスタリングされていますね。そちらは自分は未試聴です。


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