1~3巻は「幻魔大戦」だが、4~20巻は「幻魔とのこぜりあい」
AMAZONの紹介文から一部を引用します。「それは、地球征服を企む宇宙の破壊者「幻魔」との戦いの幕開けだった。「幻魔」には、いかなる近代兵器も用をなさない。対向しうるのはただ一つ、エスパー(超能力者)の力のみ。ルナ姫は宇宙戦士ベガとともに、世界中から有能なエスパーを探し集める。その中に、日本の高校生・東丈がいた・・・」
角川文庫「幻魔大戦」は、壮大なSF作品なのですが、壮大な感じがするのは、最初の3巻までで、早い話が、1~3巻はタイトル通りの「幻魔大戦」ですが、4~20巻は「幻魔とのこぜりあい」あるいは「自己探求の物語」であり、「大戦」とは言えない内容に変化してしまいます。
まあ、しかし、この4巻以降も、GENKEN会長となる、美少年・東丈の最初の講演会の内容を筆頭に、なかなか素晴らしいことを書いています。講演会の演説を全部小説に書いて、感動させてしまう、平井和正氏のパワーが炸裂します。そのずーと後の、筒井康隆氏「文学部只野教授」では大学の講義そのものが小説になっていますが、その前から、すでに平井和正氏は、講演会の演説内容そのものを小説に書いている、一種、時代を先取りした先鋭的な小説です。
さらに、誰もが、心の王国の支配者だから、自分の心のありように責任を持て、というメッセージは明確で、わかりやすい。
とは言いながら、この小説がわかりやすいか? といえば、うーんですね。例えば、テレパシー能力があり、非常に有能で、しかも美女でという、杉村由紀が、途中から、東丈の秘書になるのですが、活躍するのは最初のほうだけで、何というか、原因が明記されないまま、疑心暗鬼にとりつかれていく。
また、頭がよく、ハンサムで人気のある高鳥慶輔という大学生が、非正規会員にされているままなのだが、なぜ東丈が徹底して無視するのか、さらに彼は途中から幻魔化しているようにも読めるが、なぜそうなったのかが明記されない(これも、後続の作品を読むと、彼が幻魔化しているのかどうかも、よくわからない)。
さらに、GENKEN会長の東丈は、途中で失踪するが、これも、原因が明記されないので、わけが分からない。まあ、村上春樹氏の小説でも、登場人物がよく失踪するが、「幻魔大戦」の場合、主人公が原因不明のまま失踪するので、本当に謎です。
そのため、東丈失踪後のGENKENで、その姉の三千子が活動を始めるのですが、まあ、見事な活動です。しかし、(とりあえずの)最終巻の20巻の終盤で、現在生じているある問題に対して、三千子が、そんなに思い悩むのであれば、己の良心の信じるように行動したらいかがですか、と表現する部分がある。それが、作者の結論だと言わんばかりです。それで、その結果、どうなったのかは、一切、書かれないのです。
「己の良心の信じるように行動」。これはもっともらしい、ある意味、美しい表現ですが、自分は危険だと思います。「良心」という人類共通の概念は、自分は無いと思っています。早い話が、Aさんの「良心」と、Bさんの「良心」は異なる。だから、いつも良心に基づいて行動すればいいとは限らない。さらに、作者の理屈では、世の中の問題は、すべて己の良心だけで中央突破できるという誤解を与えかねません。実際、世の中は、そんなに甘くなくて、己の良心だけではどうにもならないことが沢山あります。良心を押し殺して、お天道様に顔向けできないことを百も承知で、頭を働かせてうまく立ち回らないといけない場面が多々あります。
自分も、このブログを、最初はアフィリエイトのつもりで始めましたが、自分に関与している、LUCIFER、PLUTOから、すぐに軌道修正が入ってしまいました。まあ、もともと自分の良心から始めたブログではないのではあるが、何か(今は漠然としているが)使命感のようなものが、行く先にはあるような気がして、そこに向かってブログを書いているよう気がする。ただ、それが良心で書いている、とは言い切れない。良心というのは、一種の独善ではないですかね。自分は2つの大きな霊的存在が関与しているので、独善を許してくれない、一種、厳しい環境にいるので、良心がどうのこうのというような、甘ったれたものとは状況が異なります。
話は戻りますが、この小説では、(よくよく振り返ってみると、たかだか)約1年間を20巻かけて、ものすごく詳細に書いていくので、小説に没頭すると、まるで現実世界のように錯覚する読者もいることでしょう。書いていることがもっともらしく、説得力も半端ないので。しかし、作者が20巻で中断したように、完全な内容ではないので、よくよく自分の頭と心を使って、現実を見ながら読むことをお勧めします。
ただ、自分の経験ですが、この作品を読破すると、思考力、洞察力、文章作成能力、哲学(特に宗教問題)、あと忍耐力、そういった分野でのトレーニングにはなると思いますよ。あくまでも個人の意見ですが。
追記
平井和正氏「ハルマゲドンの少女」の後書きに、なぜ「幻魔大戦」「真幻魔大戦」が突然中断したのかが書いてあります。自宅に白アリの被害があり、家屋の被害自体はさほどでもなかったが、書斎(2F)の真下の風呂場の脱衣所の床下部分に薬剤を噴霧したので、書斎だけが薬剤臭くなり、それを吸い込んでしまい、熱が出て寝込んでしまった。寝込んでいるうちに45歳になった。それで、「幻魔大戦」「真幻魔大戦」の言霊が離れていってしまった、と書いてある。言霊使いとしては、致し方ないということでしょうか。



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