この第14巻は特別であり、何度読んでも感心する
AMAZONの紹介文から、「真幻魔大戦」について少し引用します。「幻魔の侵攻を逃れた別の世界。東丈は超能力に目覚めることなく、29歳の青年作家として平穏な人生をおくっていた。幻魔大戦と壮大なデュオを奏するもうひとつの幻魔大戦、いよいよスタート!」
と、すごく期待させるシリーズなのですが、全巻読破して思うのは、「真幻魔大戦」は、全体として、最もおいしいところを全然書いていない。最初の世界で、大作の救世主シネマの製作・公開がどうなったのか、ムウ大陸がどのように素晴らしい国で、その生活内容や技術水準はどうなのか、超空間で誕生した救世主の赤子はその後どうなったのか、ムーンライトや、ソニーや、金狼ナルや、ソル王女がその後、どうなったのとか、いくらでも、面白くなりそうなのに、作者はなぜ書かないのだろうと思うのです。肝心なところにくると、時空を移動してしまうので。
ただですね、「真幻魔大戦」第14巻は、何度も読んでいるが、ダントツに質が高いです。第1巻から読んで感じるのは、やはりこの第14巻は特別であり、何度読んでも感心します。
この第14巻の特徴は、ムウ大陸のソル王女(角川「幻魔大戦」の井沢郁江の前世)と暗黒の大祭司メルムクワールの対話であり、この内容は、宗教的な哲学の領域にまで到達していると思います。ソル王女の真実を追求する、推理力、洞察力、論理力、そして行動力が半端ない。
そして、暗黒世界の支配者から贈られた聖なる奇跡の大霊物「幻魔書」が登場する。これは火でも強酸でも滅することができない。「肉眼でのみ見る者は、それは変哲もない書物に見えたかもしれない。」かもしれないが、これは「サタンの書」なのです。自分は、こういう、ものすごいものが出てくる物語を、かつて1度も読んだことも、聞いたこともない。
そしてソル王女は、誰も解読することができない「幻魔書」の超古代文字を、霊視により解読し、堕天使ルキフェルを呼び出して対話します。対話の内容が、真実を書けているかどうかは、わかりませんが。ただ、自分がLUCIFERに感じる、霊格的に巨大な指導者というか、大天使として感じるようなものを、平井和正氏も、どうやら感じているような、そういう内容になっているので、自分は一種、納得するところがあるのですよね。ただ、作者が書いているような、ルキフェルの倦怠感のようなものは、自分はLUCIFERには特段、感じない、もっと若々しいというか、溌剌というか、自分はそのように感じますね。
この作品では、魂として明らかに上位に位置するものが、下位に位置するものとどのような口調と内容で対話するかを、平井和正は簡単に書いているように見えるが、すごい手腕です。はっきり言って、わかったような、わからないような感じというか。
こういうものすごい内容は、普通の文学作品であるならば、何らかの理由で「時間が限られているから・・・」とか、「思い出せる範囲で書くと・・・」とかで、作者が工夫して、一種、限定された範囲だけを書くのが普通のように思うが、この作品は違う。徹底して考え、書いてしまっている。ものすごい、としかいいようがない。
自分は勝手に思うのだが、この第14巻で、平井和正氏が書きすぎてしまったために、次の第15巻をもって、「真幻魔大戦」は中断することになったのではないかと、憶測を巡らせるのですが・・・。
追記
平井和正氏「ハルマゲドンの少女」の後書きに、なぜ「幻魔大戦」「真幻魔大戦」が突然中断したのかが書いてあります。自宅に白アリの被害があり、家屋の被害自体はさほどでもなかったが、書斎(2F)の真下の風呂場の脱衣所の床下部分に薬剤を噴霧したので、書斎だけが薬剤臭くなり、それを吸い込んでしまい、熱が出て寝込んでしまった。寝込んでいるうちに45歳になった。それで、「幻魔大戦」「真幻魔大戦」の言霊が離れていってしまった、と書いてある。言霊使いとしては、致し方ないということでしょうか。


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